千年の祈り

introduction

全米の栄誉ある賞を独占、世界が注目する中国人女性作家のデビュー短編集
その珠玉の一編を映画化した、『スモーク』のウェイン・ワン監督最新作



わだかまりを抱えて離ればなれになった親子が、あらためて本当の親子になるまでを描く感動の物語
 父には分からなかった。なぜ、娘から笑顔が消えたのか。娘には分からなかった。なぜ、父が本当のことを話してくれないのか。ある日突然、父はやってきた。離れてしまった心と心を結ぶため、遠路はるばる海を越えて──。 妻に先立たれ、北京で一人暮らす父。夫と別れ、アメリカで一人暮らしを送る娘。娘の行く末を心配した父がアメリカを訪れ、親子は12年ぶりの再会を果たす。毎晩、自慢の料理を拵(こしら)えて、仕事で遅い娘を待つ父。互いを思いやりながらも、食卓に流れるのは沈黙ばかり。父は娘よりも、近隣に住む、ほとんど言葉の通じないイラン人のマダムと心を通わせていく。遂にある日、娘に積年の思いをぶつけられた父が、人生の最後に打ち明けた“本当のこと”とは──?

 人と人の出逢いは、天が定めた運命でもなければ、偶然でもない。すべては、長く深い縁(えにし)の末の必然なのだと、中国のことわざ“百世修来同舟渡、千世修来共枕眠(同じ舟に乗り合わせるならば百世もの前世の縁がある。枕を共にして眠るのであれば千世もの縁がある)”は語る。アメリカへ暮らす娘は、このことわざを英語で伝える時、自らの想いを込めて縁を祈りと訳した。『千年の祈り』という美しくも厳粛な響きを持つタイトルは、そこから付けられた。親と子として出逢った縁も、また同じ。長い祈りの積み重ねだからこそ、何度ひびが入っても、必ず修復できる。

 親子、兄弟、夫婦、恋人、友人──人はこれまで出逢った一人一人との深く温かい縁に守られていることを私たちに気付かせ、この不安な時代を歩き続ける勇気をくれる、それが映画『千年の祈り』なのである。

  北京生まれの小説家、香港出身の監督、中国を離れた主演俳優、日本人プロデューサー異文化で生きる者たちの魂が奏でるアンサンブル

 日本では、村上春樹が受賞したことで知られるフランク・オコナー国際短編賞。その栄えある第1回を、いきなりデビュー短編集「千年の祈り」で受賞し、世界から注目を集めたイーユン・リー。北京で生まれ、北京大学卒業後に渡米し、英語で小説を書く女性作家だ。その他にも、PEN/ヘミングウェイ賞、ガーディアン新人賞、『ニューヨークタイムズ・ブックレビュー』エディターズ・チョイス賞、ホワイティング賞などの権威ある賞を次々と受賞し、『グランタ』の「最も有望な若手アメリカ作家」の一人にも選ばれた。

 高く評価されたその小説に魅せられたのが、『スモーク』のウェイン・ワン監督。敬愛する小津安二郎監督作品の世界観に通じるものを感じたと、映画化を切望した。『トウキョウソナタ』のプロデューサー、木藤幸江の協力を得て、イーユン・リー自らも脚色に参加、ワン監督と共に映像的効果を熟考したストーリーを練り上げた。

 父親のシー氏に扮するのは、故国中国を離れてアメリカで活躍する『ラストエンペラー』のヘンリー・オー。娘の前では不器用な父だが、アメリカで出逢った人々とは、カタコトの英語とジェスチャーでコミュニケーションを図り、宗教の勧誘に訪れたアメリカ人青年たちには共産主義を説くなど、ときにユーモラスな姿で周囲を和ませる。また、万感の思いをこめた最後の“告白”では、どんなに平凡な人生にも、必ず胸を打つドラマがあることを教えてくれる。観る者が自身の人生をも愛しく感じることができる、心に残るシーンになった。

 祖国では感情を内に秘めて育ったため、異国の言語である英語でやっと自己表現ができるようになったと語るイーラン。イーユン・リー自身を投影したと思われる娘には、『ジョイ・ラック・クラブ』のフェイ・ユーが扮している。

 中国人作家と俳優たち、香港出身の監督、そして日本人プロデューサー。ここに、アジアの血が流れるアメリカ映画という、未来を予感させるアンサンブルが完成した。本作は、言葉や国境を超越した人と人のつながりを見つめ直す世界の人々の胸に響き、第55回サン・セバスチャン国際映画祭では、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀男優賞、CEC最優秀賞を受賞した。

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監督:ウェイン・ワン / 原作・脚本:イーユン・リー / 出演:ヘンリー・オー フェイ・ユー / 83分 / 日・米合作 / 35mm / ビスタ / 提供・配給:東京テアトル
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